非モテ男子の非日常
元より集団ドッキリを仕掛けるような遊び心に長けたクラスでもないし。だからといってただのモテ期で片付けるにはあまりにも不審な点が多すぎる──このような事態を招いたその原因として思い当たるのは昨日助けた男子生徒。
「失礼しますッ!」
片っ端から教室の戸を開けていくよりは手っ取り早いと睨んでミカゲは職員室の戸を勢いよく開いた。途端に止む音と声。そして視線。
「待てえええッ!」
「すみませんでしたあああ!」
どう考えても授業中に抜け出した素行の悪い生徒です本当にありがとうございました!
それにしては追う教師の数が多いような──ミカゲは階段の手摺を滑り降りたり捕まえるべくして広げられた腕の下を潜り抜けたり忍者特有の音のないステップで回避しながら目に付いた扉の先へ駆け込む。扉を閉めて鍵を掛ければ影が差した。
「なにしてんの?」
即座に振り返ったミカゲは顔を引き攣らせながら扉にぴったりと背中をくっ付けて。
「校長室なんだけど」
──同じ目の色をしている。
「いいい……命、いや、」
ミカゲは自身を両腕を構えて庇いながら。
「ケツの穴だけはご勘弁を……!」
「何の心配してんの?」
「クレイジー」
奥のデスクの前に座っていた男が口を開く。
「話を聞いてやれ」