非モテ男子の非日常
さ、さっきから……おかしい気がする……
「授業を始めよう」
朝のホームルームを終えた流れで一時限目である地理の授業が始まった。ミカゲは教科書やノートを取り出しながら頭の中でぐるぐると思考を巡らせる。──拙者は漫画やアニメをこよなく愛する冴えないオタクの一人。この歳になるまでファーストキスさえ大事に取ってある始末だが不自由と感じたことは全くなかった。
人のモテ期とやらは人生で三回訪れるらしいが記念すべき第一回目にしては一気に降りかかりすぎのような気も。というか固定カップルが他に矢印を向ける行為は一部の層にとってはとんでもない地雷行為なのでは。仲良く分ける分けないの問題ではないしそもそも何故拙者を──
「ミカゲ」
大袈裟に肩を跳ねたミカゲが顔を上げればいつの間にかベレトが目の前に立っている。
「当てられていたよ」
カムイが小声で伝えることで状況を理解。
「授業に集中しなさい」
「す、すみませ」
「それとも」
ベレトはミカゲの頬に触れると瞳を覗き込んで。
「個人授業を受けたいのなら構わないが」
ぞわぞわぞわぞわ!
「あっ。野生のコレクレー」
「何処ですか!」
ブルーが反射的に立ち上がるのでクラス全員目を奪われた。当然ブラフである。
「……ミカゲは?」
先程まで彼が座っていた席には丸太が一つ。
「やれやれ」
ベレトは息を吐いて赤の双眸を擡げる。
「……指導が必要だな」