非モテ男子の非日常
と。電気がふっと消える。
「いけないんだぁ」
ミカゲは聞き覚えのある声にはっと目を開く。
「先生?」
本職上暗闇には目が慣れていた。ベレトは手にしていた天帝の剣を手放す。無理もない──彼の体には黒い触手が纏わりつき動きを封じていたのだ。そういう展開かとも思ったがどうやら此方に手を下すつもりはないようで。
「あ……あの時の……」
現れた男子生徒にミカゲは思わず声に出して。
「昨日ぶりだね?」
「こいつのことだろ」
続けざま現れたクレイジーが親指で指したのは先日溺れていた男子生徒の兄と思しき金髪の見目麗しい男子生徒。
「まさか私の力がお気に召さないとは」
「ど、あっ……当たり前で御座る!」
ミカゲは拳を握りながら訴えかける。
「拙者は確かに恋愛経験ゼロ歴イコール年齢の冴えないオタクかもしれない……しかしだからといって不満に思ったことはないで御座る! 寧ろ何もない平々凡々な日常こそ拙者の愛するスクールライフなので御座るよー!」
モテなくてもいい。
恋人が居なくてもいい。
拙者には。──否、オタクには。
二次元さえあればそれで!
「だってさ」
クレイジーは呆れたように。
「お兄様。こいつ筋金入りのオタクだよ?」
「元に戻してやれ」
男子生徒に続いてマスターも。
「ふむ」
その男子生徒は顎に手を添えて呟く。
「やはり愚者に力を使うべきではないな──」