非モテ男子の非日常
その日は朝から大雨だった。
通学路の近くにある河川が氾濫しているとのことでホームルームでは遠回りを推奨されたが水タイプである自分にしてみれば無問題。
そう思っていたのだが。
「ぷはっ」
どう足を滑らせたのか知らないが兎角川に流されていた同じ学園の制服の男子生徒を救出したのはミカゲだった。氾濫していようと水の流れは把握しているので流されることはなく無事に救い上げて川縁で弾む息を正す。
「だ、大丈夫で御座るか……?」
元より理由が何であれ強く言える性格でもないのでびしょ濡れの男子生徒の身を案じるだけで責めることはしなかった。その男子生徒は呆然としていたが事態に気付いたのか顔を上げて。
「お前、ぼくを助けてくれたの?」
「そ、そりゃあ……」
元気そう。
「君」
ミカゲはびくりと肩を跳ねて振り返る。
「弟を助けたのか」
同じ制服の男子生徒。
「癪ではあるが感謝しよう」
そう言って発言を帳消しにするような柔らかな笑み。どうやら兄弟であるらしい。
「お兄様っ」
そういえば最近他のクラスに変わった転校生がやってきたとか何とか聞いたような。
「ふむ」
その男子生徒はじいっとミカゲを見つめて。
「大方理解した」
にっこり。
「明日からは良い日になる事を約束しよう」
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