御人好しレッドの不幸日和
指揮能力に関しては天才と持ち上げられるほどの優秀な成績を上げているのに運動はからきし。走ったところで後ろから数えた方が早いんじゃないかといった情けなさ全開の順位だったのに、そんな自分がたかが本、されど本の為に十数秒とかけず自身の教室の手前、類を見ない全力疾走により迅速に辿り着いた。
はあ、はあと背中からどっしりのしかかってくる疲労におわれて膝に手を付き喘いでいる隙に、逆に運動能力に長ける三人はあっさり追いついてきてしまった。
呼吸が静まらないまま、伸ばした手が戸を開く。
"キーンコーンカーンコーン"。
「……あ」
チャイムが鳴り響く。
昼休みは終わりを告げたのだ。長いようで短く、そして疲労困憊。
疲れたよと嘆けばパトラッシュが迎えにくるだろうか。なんて馬鹿げたことが頭を過るがさっさと払って。溜め息ひとつ、他生徒と同様席に足を向ける。
「焼き土下座」
「えっ」
「茨の茎で吊るしてあげましょうか」
「そいつはちょいと拷問じゃあないのかい」
実の妹がどう言おうが優先すべきはレッドなのだ。
まあ、この場で仕掛けるほど酷じゃないが。それぞれの想いを抱きながら次の授業の為此方の三人も渋々と席に着く。レッドが教科書を揃えていると、
「……っ!」
とんとんと肩を叩かれて。振り向けばリオンがにこりと笑った。
後ろの席だっけ。一度は驚いて肩を跳ねるも、ひと息ついて向き直る。