御人好しレッドの不幸日和
「……ユウ、」
じろりと視線を上げる。
「リオンに聞け」
えっ?
「趣味の合わない内容だったのでな。元の持ち主に返しておけと命じておいた」
そう言って、ユウは本に視線を戻したがレッドは思考が停止していた。
確かにあの本は有名な著者の限定版でも何でもない、休憩時間の暇潰しにでもなればと思って前情報無しでタイトルに惹かれるがまま手に取った程度の本だが。
それでも平凡なりに気に入っていたんだ。
いよいよ表情にも焦りが滲み始める。
預けた相手が、自他共に認める超ど級の変態では。それも、好きだ愛してる結婚してくれ私の子供を生んでくれと常に詰め寄っていた相手から預かったのだ。
微々たるものであっても匂いが付着しているだろう。
そうなれば。――無事では済まされない。
「ふぎゃ、」
レッドが理科室を飛び出したのとローナ達が入ろうとしたのはほぼ同時だった。
「びっくりした……」
肩を跳ねたが既の事で正面衝突は躱し、ほっと息をつくローナ。
「レッド?」
「まさか、ここにもなかったのか?」
シフォンとネロは口々に、急いでレッドの後を追う。
「ち、ちょっとぉ!」
ローナは理科室を覗き込んでいたが、気付くと慌てて、
「置いていくなってばぁ!」