御人好しレッドの不幸日和
――第二理科室。
戸の前に立って深呼吸。鍵は掛かっていないようなので横に引いて開くと、それまで此方に背中を向けていた白衣を羽織った生徒が振り返った。
同時に緑色の腰まで流れた髪が揺れて、切れ長の目に捉えられる。
「……レオン、さん?」
レッドは試しに呼びかけた。
「珍しいな。この私に何の用だ」
――やっと見つけた。
「うちのクラスの……ウルフから、本を借りてたと思うんだけど」
しかし本題に入るよりも先に。
「ああ、あの本か」
次の言葉で。
「もう読み終わったからな」
期待は。
「ユウに貸してやった」
いとも簡単に裏切られてしまう。
「それ以上は聞くな。本人に聞け」
興味のない相手では態度も接し方もそれなり、とは聞いていたが。
安堵しつつ、注目を変える。その又貸しした相手というのも、今現在そこの椅子に腰を下ろして読書をしているのだ。自分の用事は済んだのか普通の制服である。