御人好しレッドの不幸日和
「――ごめんっ!」
ここはすま組の教室。
「実はあの本、ウルフに取られちゃってて……」
手を合わせて謝るのはルーティである。
ローナに始まりピチカ、スピカ。転々と。今のところ連鎖が続いているわけだが、繋げたところでもちろんボーナスポイントは入らない。
「意気地なし! それでも男かあっ!」
ひええ、とローナの勢いにルーティは怖気付いて。
「そもそもお前が又貸しなんかしなけりゃこんなこと」
「とっとにかくウルフを探そうよ」
提案したが刹那。
「用があるなら手短に話せ」
――不意に背後が陰る。
「出たあああっ!?」
そんな幽霊を見たかのような反応をしなくても。
「う、ウルフ」
「あぁ?」
「僕から取った本!」
背中を押せば素直に前進するタイプらしい。
「返してほしいんだけどっ!」
肝心なウルフはきょとんとしている。もうひと押し、と思ったところで、ウルフは何故だか気まずそうに目を泳がせ始めた。……おいおい。まさか。
「……悪ィ。あの本なんだが――」