御人好しレッドの不幸日和




例えば。ふとした瞬間、ああ、あの展開は最高だったなあ、とか、あの登場人物の台詞はなかなか深いものがあって考えさせられたなあ、なんて。

それが一度読み終えた本だったとしても、読み返したくなる時が来るんだ。

「ねえ、ローナ」

ソースはもちろん俺なんだけど。

「この間貸した本、返してくれないかな?」

……でも。

「ほいほーい!……うげっ」

まあ、よくあるよね。

「レッドごめんっ! あれ、貸しちゃったんだ……」


又貸し。


――時刻は昼休み。

これが何でもない休憩時間なら誰も大抵は教室にいるものだが、昼食込みの一時間設けられたこの時間は誰が何処に居るかなんてはっきりしていない。

「あうぅ……ごめんよぉ、レッド……」

本人は絶賛猛反省中だから許すんだけど。

「馬鹿。お前なんで又貸しなんかしたんだよ」
「呆れた妹だわ。躾がなってないわね」
「うえぇ……ごめんなさいぃ……」

兄のネロ、姉のシフォンに挟まれて両側から頬を摘ままれながらローナ。

「い、いいって二人共。ローナも反省してることだし」

何より廊下は人目に付くから。なんて本音は隠しておくとして。

「……あのなぁレッド」
「仕方ないわよ。そういう性分だもの」

呆れて、小さく溜め息をつく二人にレッド、苦笑い。
 
 
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