王子の機嫌を損ねたら
「まっマルスは」
ロイは大きく息を吸って。
「盛大な勘違いをしている!」
マルスは目を丸くする。
「え……」
「あれはファルコが元々授業の変更を知らなくて……俺達もトイレだかに行ったと思って、止められなかったんだよ!」
マイクに拾われたロイの声は放送で校内に響き渡り、マルスははっと体を起こす。
「か、勘違い……?」
「そうだ! 悪戯なんかじゃない!」
そこまで言ってしまえば遂にマルスはロイを解放し、項垂れた。ロイもとりあえず上体を起こし、首を傾げていると。
「……よかった」
ぽつり。顔を上げて、嬉しそうに。
「じゃあ、仲間外れじゃないね」
全く、こいつは。くすくすと笑い始めるマルスに釣られてロイも笑う。斯くして今回の事件は何とか丸く収まって――
「ちょ、メタナイト! 落ち着いてよ!」
「理事長、駄目ですってば!」
ない。収まってない。
「そうだ、下着っ」
「仲間外れは」
マルスはにっこり。
「よくないよ?」
「や、おまっ……し、」
再び詰め寄るマルスにロイは青ざめ、
「下着返せえええ!」
あいつだけは怒らせちゃいけない。絶対。
end.
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