王子の機嫌を損ねたら




「……え」

エプロン姿で家庭科室に飛び込むと、星組の生徒と教師のリンクがぽかんとしていて。マルスは目を丸くして、硬直。

「どうしたんですか?」
「えっ」
「今日の家庭科は此方のクラスが遅れているので、すま組は音楽に変更したはずですが……確か、移動教室だったかと」
「えっ」

本当にそれしか言葉が出てこない。

間もなく、くすくすと笑う声が聞こえてきて、マルスはようやく理解する。


――はめられたのだと。


「間違えました!」

顔を真っ赤にしながら扉を閉めれば、扉の奥から盛大な笑い声が聞こえてきて。

マルスは頭を抱える。いつも教師ばかりが悪戯に引っ掛かっていたので油断していたのだが、まさか自分がはめられるとは……

「……いい度胸じゃないか」

そう。僕の反応を楽しもうってのかい。

ぽつりと小さく呟けばマルスの笑みに影が差し、辺りに不穏な空気が漂って。


その悪戯の対象を僕にしたこと、存分に後悔するといい――
 
 
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