演劇上等!~ブレーメンの音楽隊編~
スタンドマイクの前に立った女子副部長は舞台より少し離れた位置から、ライトアップされて脚本を手に、語り出す。
『あるところに、一匹のロバがいました』
舞台袖から現れたのは、ロバ耳の付いた茶色のカチューシャを頭に被ったドンキーと、その飼い主役らしいリンク。
「何で俺がお前に飼われなあかんねん」
「どうせ出ていく設定でしょう」
「理由、なんやったかなぁ」
『かつて働き者だったロバは年を取ってしまい、仕事が出来なくなってしまったので、飼い主から虐待されるように……』
「そうそう。絆創膏貼っとくん忘れた」
「似たようなものを作りますか」
にこやかに笑うリンクに、嫌な予感がしてドンキーは身を引く。舞台は暗転して。
「ほら、赤い痕を」
「何すんじゃボケェェ!」
暫くして舞台は再びライトアップ、舞台端に倒れるリンクと何故か身なりを整えながら頬に青筋、呆れ顔のドンキー。
「教師がどないな神経しとんねん」
『これは敵わないと身の危険を感じたロバは、出ていくことを決意するのでした』