キーメクスの審判
音が途絶えて。
空気が冷たく変化する。
「っ……」
ルーティは先程までとは打って変わって緊張感を孕んだ空気に呑まれそうになりながらも小さく頷くと背筋を伸ばして座り直し、事の経緯を話し始めた。フォーエス部隊とダークシャドウの関係値や彼らの気になる発言や行動──その中で事件に巻き込まれたユウが失明してしまったという話にも触れざるを得なかったが、シアは「そうですか」と終始淡々とした様子で相槌を打っただけだった。
まさか。興味がないという話ではない。
彼女の天色の瞳は。
間違いなく。
「……分かりました」
ルーティが話を終えるとシアは静かに言った。
「影を司る狐の男性と双子軍師の妹君はお互いに恋慕う仲なのでしょう」
「そ、……そうなのかな。……そうかも」
曖昧な言葉を返せば静かに持ち上げられた瞳が真っ直ぐに見つめるのでルーティは同意した。
「双子軍師の妹君がまず恐れるのは兄君の存在」
シアがそうして左手を伸ばした先で木質の箪笥が表面に青白い光を灯して反応を示した。そのまま手のひらを上に向けて指を招くように二度三度引けば上から二段目の引き出しが念力によって引き出され、綴紐によむて巻き物かのように閉じられた黄ばんだ紙が取り出される。
「どのような思考も見通されることを見越して既に天空の都市にはいらっしゃらないというのがごくごく自然な解。加えて影を司る狐の男性はその能力が故時間の経過と共に粗が出る」
淡々と語る内に念力によって浮遊しながら招かれた紙はおもむろに紐を解かれた。よく見えるようにルーティ達に向けて開かれたそれはどうやら簡易的な世界地図の様で。
「世界各地で発生しているとされる怪奇事件には一見すると疎らのようで似通った条件がある。条件にあたる箇所は四箇所──けれど先も話した様に双子軍師の妹君が第一に恐れているのが兄君なれば妨げとなっていた三箇所の地点は除外されひとつの解が浮かび上がる」
世界地図と思しきその紙がひらりとルーティの前に落ちるとシアは静かに指し示す。
「──ハイラル平原」
ルーティは小さく目を開く。
「おふたりが向かわれたのはこちらで間違いないでしょう。……」