キーメクスの審判
午前八時五十分──食堂。
「……そっか」
端末に表示された通話終了ボタンをタップした後、注がれる視線を眉を下げながら返して首を横に振ることで示すサムスにルーティは肩を落とした。
なんとまあ寝覚めの悪い朝である──昨夜は碌に眠れないままそれでも何もないことを望んで半ば無理矢理自身を夢の世界へ引きずり込み、ようやく朝を迎えたというのに眠ったのを後悔するくらいとんでもないことになっていたなんて。朝起きたら世界が崩壊していたなんて話よりは遥かにマシだろうがこのまま放っておけば間違いなく取り返しのつかないことになる。
そう思って昨夜はスピカと連絡を取るべく通話を試みていたというのに応答しないどころか折り返しもなくメッセージにも反応がない。前述の通りフォーエス部隊に関しても全く連絡が取れないばかりではなく行方知れず──起きがけに聞いた話からも察するに二者の間でもう既に最悪の地点まで話が進み、終止符を打とうとしているのだろう。
このまま大人しくしていればこれ以上被害は出ないまま話は終わるのかもしれない。
それでも。
僕は。それが最善だとは思えない──
「一応うちも捜索はお願いしておいたけど」
「あまり期待はできないかもしれません……」
言ってみればただの我が儘だというのに捜索を快く引き受けてくれたピーチやゼルダには本当に頭が上がらない。それだというのに申し訳なさそうに話す二人にルーティは慌てて首を横に振った。
そもそもこの広い世界の中から情報も無いのに探し出そうなんて無茶な話で。全く思い当たる節もなければ凡そ見当も付かない──
「ユウとリオンはどうなったんだよ」
「一日で治るわけないだろ」
「っぱ駄目かー……」
災厄の目と称される二人の能力はこういう手詰まりといった状況下でも活躍し希望を見出してくれた。今、彼らの能力に頼れないお陰で嫌というほど有り難みを噛み締めている。
「じゃあお前が試しにやってみたら?」
「は、はあ?」
「未来予知だって」
「無理に決まってるだろ……!」
「なんだよどいつもこいつも──あでっ!」
ネスの返答に口を尖らせるディディーの頭頂部を目掛けて拳骨が降り注いだ。
「そぉゆうこと言わん」
ディディーは相変わらず膨れっ面で。
「いやだって……こいつがユウに念力の使い方とか教えてもらってたんならワンチャン未来予知とかも出来るかもしれないじゃん……」