キーメクスの審判
なんで、僕、隠れてるの?……大丈夫だよね?
仲間なんだから。なにもないよね?
……そのはずなのに。
「!」
プランタースタンドの後ろを覗こうとして進み出た影にリドリーは目を丸くする。
「駄目だったかな」
そうして訊ねる声はピチカのものではない。
「テメェかよ」
ハル君──?
「おはよう」
後ろ手を組みながら相変わらずの無表情で。
「皆、早起きしてる」
「起きてたんだね。ちょうどよかった」
そういえば──今回の事態を聞き付けて看病をする為に駆け付けてきてくれたのはあの三人の他にもいたのだった。その内の一人が彼だったことを自分が部屋に閉じ籠もることで会わないばかりにすっかり忘れていたのである。
「隊長、なんて言ってたの」
ピチカは蛇に見込まれた蛙のように動けない。
「それが──」
「……書き置きくらいさせて貰えないもんかね」
「ちったぁ考えろそれじゃ意味ねーだろぉが」
「お前なぁ……年長者は敬うものだぞ?」
「知ったことかよ」
彼らが話をする中でハルがほんの一瞬視線を向けたのでピチカはどきりとした。あまりにも自然な振る舞いだったものでたまたまかとも思ったが気付いていた様子。……じゃあ。
僕のこと、庇ってくれたの──?
「隊長に怒られるよ」
ハルが言うと他愛もないやり取りに終止符が打たれたようで。シュルクの「行こう」の一言を合図に、足音が遠ざかっていく。
「……お姉ちゃん」
完全に声も音も聞こえなくなった後で己の口を解放しながらピチカはぽつりと呟いた。彼らの話が確かなら拘束されたダークフォックスをルフレが無断で連れ出し行方を
ついでに付け加えるとすれば。
大事になる前に自分たちだけで解決を図ろうとしている可能性が高い──
「……皆に……知らせなきゃ……!」