キーメクスの審判
リオンは……俺たちの部屋にいるんだ。
会うことはできないけど。
話すことくらいはできると思う。……
「……ここだね」
ルーティは扉を見つめながら呟く。
二人はネスとリュカの部屋の前に居た。詳しい症状までは聞かされていない。ただネスの"会うことはできない"といった発言がどうも引っ掛かる。ルーティは不信感を抱きながらもとりあえず呼びかけてみることにした。
「リオン、起きてる?」
返事はない。
「眠ってるのかな」
それであればなるべく起こしたくはないところだがどういった症状なのかは気になるもの。ルーティはそっとドアノブに手を掛ける。
「ルーティ殿」
名前を呼ばれたのはその直後だった。
「フォックス殿も」
扉越しに声が聞こえてくる。
「……リオン?」
フォックスは眉を寄せた。
「よかった。起きていたんだね」
「うむ。ようやく落ち着いてきたところだよ」
リオンは申し訳なさそうに続ける。
「皆には迷惑をかけてしまった」
「……そんなことは」
直前に記憶喪失や失明といった重い症状を見てきただけあって声色から判断するに元気そうな彼に勝手ながら安心感を抱いていた。であればこのまま扉越しに話すのも可笑しな話だろうとルーティはそのままドアノブを捻って開けようとしたが横から制するように手を重ねられて。
「フォックス?」
何故か表情に影を差している。
「開けないでくれ」
ルーティは思わずドアノブから手を離した。
「え、何」
どうしたの、と聞いても返事はなく。
無言が不安を掻き立てる。
「……さっき」
フォックスが代わりに口を開く。
「喋っていたのはルーティだけだったのにリオンは俺が付き添っていることに気付いた。耳が良いのは知っているけど多分そういう枠の話じゃない」
心臓が跳ねる。
「制御、出来ないんだな?……リオン」