気付いて!レッドさん!



三人はそれぞれ顔を見合わせた──するとローナは後ろ手を組みながらゆっくりと後退してシフォンとネロの前に立ち、肩を竦めて小首を傾げる。

「……どうして?」

レッドは小さく笑みを零した。

「見た目は完璧だけどね。俺が見てるのは表面じゃなくてもっと根っこの部分だから」


それに。


「パートナーだからね」

三人は改めて目を丸くする。

「気付くよ」

柔らかく微笑む。

「……俺が気付きたいから」


三人はもう一度それぞれの顔を見合わせると小さく頷き合った後で正面に向き直り、そっと瞼を閉ざした。次の瞬間──彼らの足下から微風程度の風が渦を巻くようにして発生したかと思うと照明によって落とされた影が足先から頭の先まで這うようにして上り包み込み、それが弾けたと同時に正体を現す。


その姿は想像していた通り。

褐色、黒髪のダークシャドウで。


「付き合ってもらっちゃったみたいでごめんね」
「問題ない」
「暇を持て余していたからね」

レッドが申し訳なさそうに苦笑いを浮かべながら手を合わせるとダークゼニガメとダークフシギソウは口々に答えた。

「こうも気付いてもらえているのに贅沢だこと」

ダークリザードンは小さく息を吐く。

「また遊びに来てね」
「ボク達も一応敵同士なんだけどね」
「検討しよう」
「早く帰らないと主人に怒られてしまうわ」

そうして三人はレッドを横切ると本棚と本棚の間の空間へと足を進めた。まさか、気を衒ったなんてはずもない──恐らくは影を通り抜けて亜空間へ帰るという算段だろう。事実不審な物音は聞こえず以降は水を打ったように静まり返って──それにしても何度見てもローナ達の見た目で性別が反転しているというのは違和感が凄いな。


……さて。


「こら」
「うわひゃぁっ!?」

図書室の扉を開くと聞き耳を立てていたローナがいの一番に声を上げた。それ見たことかとシフォンとネロが呆れる側でローナは仏頂面で腰に手を当てて見下ろすレッドの前に両膝を付き許しを乞うように両手を組みながら、

「ちちちっ、違うんだよぉレッドぉぉぉ!」
「何が違うのかな」
「お前余計なこと言わない方がいいぞ」
「どっちの味方なのさぁ!」
「レッド」
「声を揃えるなああ!」
 
 
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