気付いて!レッドさん!
む。もうこんな時間か……
「んーっ……」
両腕を力一杯上に伸ばした後で凝り固まった体を解すべく肩を回し、満足げに息をついて本を閉じる。食事中に本を見るなと注意を促され、ついつい意地になって早食いをして図書室に駆け込んでしまったが些か子供染みていたのではなかろうか……過ぎたことは仕方ないとはいえその上で夜更かしともなると挽回の余地もなくなってしまう。十二時を回る前には部屋に戻りたい──レッドは壁に飾られた掛け時計を恨めしそうに見つめながら立ち上がる。
本を棚に戻す前に栞を挟んでおいて、と。心配しなくても他の誰も読まなそうなものだけど何の為ね。レッドは短く息を吐いて本棚を離れる。
「あ、いたいた!」
聞き覚えのある声に目を丸くした。
「ローナ?」
後ろ手を組みながら軽やかな足取りで接近して歯を見せて笑う彼女の後方──出入り口付近には保護者基ネロとシフォンも立っている。
「迎えにきたの?」
「そーだよ!」
「いつまで本読んでんだよ」
「少しは危機感を覚えなさいな」
大袈裟だなぁ、と。レッドは苦笑いを浮かべながら人差し指で頬をそっと掻く。
「かえろ!」
無邪気に手を差し出すローナにレッドは頷いておもむろに手を伸ばしそれに応えようとした。
が。
「レッド?」
触れる寸前でその手は止まる。
「僕、手洗ったよ?」
「ううん。そうじゃないよ」
レッドは首を横に振って微笑する。
「……凄いね。よく似てる」
意味深な発言にネロとシフォンはきょとんと顔を見合わせた。ローナも首を傾げている。
「騙されないよ」
レッドは口元に浮かべた薄笑みを絶やさずに。
「ダークシャドウだよね?……君たち」