無理なものは無理なので!
……フォックス?
名前を呼ぶ声にラディスはきょとんとして聞き耳を立てるべく扉にそっと耳を当てたが直後に後ろで物音が鳴ると訝しげに振り返って。
「……本気?」
カービィが恐る恐る訊ねるとフォックスはそのままの体勢でこくりと頷いた。
「おいくつですか」
「十八」
「ぴちぴちの未成年やんけ」
「関係ない」
受け答えが淡々としている。
「渋るからだぞ」
「なぁんで僕のせいなのさ」
ロイが小突くとカービィは唇を尖らせた。
「逆に聞くけど」
フォックスは手を下ろしながら。
「……ラディスと……したくないのか……?」
えっ?
「や、そもそも妻子持ちの男だし……、なぁ?」
それはないとばかりに顔の前で手を振って答えたロイが振り向けば目と目が合う前にさっと顔を背けるマルスとカービィ。
「俺は……自分に嘘は付きたくない」
節目がちにそう話すフォックスの頬には薄紅が浮かんでいた。どんな感情を秘めているのだろう両目は濡らしたように潤んで見えて。生真面目な彼からは想像も付かない様子にごくりと息だか唾だかを呑み込む音が聞こえたような──そうでないような。
「異論がなければそいつに行かせるが」
「マスターはさっきから大丈夫か?」
冷静な口振りで話してる間も何度も繰り返し壁に頭を打ち付けているマスターを目にマリオは若干引き気味。どうやらクレイジーも兄の軽率な行動が相当お気に召さなかった様子。
「ゆうても入れる穴がないやないか」
「今度教えて差し上げますよ」
「は?」
フォックス。
「っ……」
勝手に先走って想像してしまったばかりにどくりと心臓が跳ねて胸を締め付けた。太陽のように朗らかに笑って皆に囲まれる優しい彼は一体どんな顔で、どんな風に触れるのだろう。
そして。そんな彼の立場を知りながらとんでもないことを考えてしまっている自分は。
誤魔化せない。
俺は。あの人のことが──