無理なものは無理なので!
そんなことを言われてもなぁ。
開けられる人が開ければいいんじゃないか……
「決まったか?」
マスターが訊ねるも誰も彼もがぶんぶんと首を横に振るのだから深い溜め息。
「というかなんで俺たちの中からなんだよ!」
ロイが勢いよく指差しながら不満を訴える。
「この部屋を作ったのはマスターだろ! だったらマスターがやればいいじゃねえか!」
ふむ、とマスターは腕を組んだ。
「その発想はなかったな」
「嫌がらないのかよ」
「元より俺は実験の成果にしか興味がない」
そうして踏み出す。
「俺が相手でも構わないな? ラディス」
「う、うん……?」
扉を開ける相手に重要性なんかあるのか?
「よし」
本当に俺は助けてくれるなら誰でも──
ガンッ!
物凄く鈍い音が響いた。
「え、……え?」
部屋の中のラディスは困惑──いや。突然の事態に困惑していたのは廊下のメンバーも同じ。
……何故なら。
何の前触れもなくマスターが急に壁に向かって勢いよく頭を打ち付けたのだから。
「ままま、マスター?」
「ど、どうしちゃったんですか!?」
「……いや……」
マスターは壁に両手を付いたまま。
「弟が嫌が、……いわゆる拒否反応だな」
「そんなに嫌だったの!?」
分からない人のために説明しておくとこの頃のクレイジーは魂だけの存在で器を得られるその時までマスターの中にいた。意識があれば視覚も聴覚も共有できるので兄の軽率な行動にクレイジーが一時的に体を乗っ取って制裁を下したというわけである。
「すまない。俺ではお前を助けられないらしい」
「そ、そうですか……」
いくら嫌だからって体を張って示さなくても……というかなんでそんなに皆嫌がるんだ?
「性別不明といえばコイツもそうだけどな」
「ひ、酷いですう! マリオさんは命の恩人を売るつもりなんですかあぁ!?」
「条件が噛み合ってるって話をしただけだろ!」
だからって喧嘩に発展するほどのことか?
「手っ取り早く相方にやらせればいーじゃん!」
「でもクレシスって妻子持ちだろ?」
「ラディスもだよ」
「あ、そっか」
俺だっていい加減に傷付くぞ……!
「じゃあさっさとクレシス探して扉を」
言いかけて。
無言の挙手に注目が集まれば。
「、フォックス……?」