無理なものは無理なので!
視線。
「……え」
集中砲火。
「何……」
「カービィ」
妙な静寂の中ぽつりとマリオが名前を呼ぶ。
「お前確か登録されているプロフィール上は年齢と性別共に不明だったよな」
「……は」
「行ってこい」
がっしりと両肩を掴みながら。
「あいつに──ラディスに抱かれてこい」
いやいやいやいや!?
「は、……はあぁ!?」
「抱かれるのが無理なら抱く方でもいいぞ」
「そういう問題じゃないッ!」
「意識するから駄目なんですよ。マスターの話していたようにただの人助けだと思って」
「この餓鬼っ、自分が対象じゃないからって!」
……何だか騒がしいな。
ベッドの前で落ち着きなくうろうろとしていたラディスはぴたりと足を止めて怪訝そうに扉を見た。あれだけドタバタと大人数で駆けつけてきてくれた音がしたのに一向に進展がない──そんなにここを開けるには一筋縄ではいかないのか。訝しげな表情を浮かべながらそっと扉に聞き耳を立てれば。
「嫌に決まってるだろ!」
カービィの声。
「ラディスなんか一人で勝手に野垂れ死んでろよ!」
……め、
「代わりなんていくらでもいるんだからさぁ!」
めちゃくちゃ嫌われてるー!?
築き上げた絆が砂漠の幻影のように掻き消えてしまうような儚い映像が脳裏に流れた。あ、あれ。俺、カービィに嫌われるようなことした?
「顔真っ赤にしちゃって、まー」
「うっさい!」
「どうでもいいけど君は声が大きすぎるよ」
顔色を指摘するロイをひと睨みして。続けざま呆れ顔でマルスが溜め息混じりに呟けばカービィはそこでようやく我に返ったのか扉を振り返った。試しに耳を澄ましてみればぐすぐすと鼻水を啜る音。
「カービィ……」
「ちょ、違、なに泣いてんのさ!?」
「俺……なにか君に嫌われるようなこと……」
「してないしてない! してないってば!」
実に滑稽な光景である。
「じ、じゃあ聞くんだけど」
「ぐず……っ、うん……?」
「誰なら……いいとかあるわけ……?」
ちなみに言うとラディスはまさか自分の閉じ込められているこの部屋がセックスをしないと出られない部屋だとは気付いていない。普段から人の話をよく聞いていない証拠である。
「……え?」
だからこそ、この回答。
「別に……誰でもいいけど……」
「はぁ?」
今度は怒ってる!?
「誰でもいいんだ……」
「はー心配して損した。やっぱ死んで」
「えっ?」
「今のは失言ですよラディス」
「男なら選ばなあかんで」
疑問符が飛び交う。
「俺、何か言ったかなぁ……」
「言った言った」
不憫な男だが自業自得である。