無理なものは無理なので!
レイアーゼ防衛機関管理下特殊防衛DX部隊。
数ある部隊の中でも厄介払いされがちである曲者だらけのこの部隊にはリーダーとは別に重要な役割を熟す"管理下"というものがある。主な活動内容については詳しく説明されていないが基本的には非戦闘員で部隊が国の為に正しく働きかけているか否か見張る存在のようなものだそう。
そんな感じで『DX部隊』の管理下としての役目を担っているのが──マスターハンドである。
「来たな」
素性は知れないが気にしたこともない。
基本的には部屋に篭りっきりでたまに出てきたかと思えば調整の為かバトルルームの機器を弄ったり食事をしてまた戻るだけ──そんな彼が珍しく呼び出してきた先は部屋の外。朝食を済ませてからで構わないと言われたので遠慮なくゆっくりといただいてから呼び出しに応じたのは。
「ラディス」
DX部隊リーダーを務めるその人。
「どうしたんだ? 急に」
怪訝そうなラディスを差し置いてマスターは一歩前に進み出るとその先にあった部屋の扉を指の背中で軽く叩いてみせる。
「誰かいるのか?」
「そうだな」
ラディスがますます怪訝そうにしていると。
「入ってみてくれ」
……?
「いいから」
中にいるその誰かとやらに了承を得ずに入っていいものなのか。疑問は増えるばかりで一向に拭えないが言われるがまま。ラディスは一応扉を軽く叩くとドアノブを捻って押し開いた。
「?」
誰もいない。
部屋は自分や他のメンバーと同じくらいの広さだがいやに殺風景で奥の方にぽつりと置かれたベッドがお陰さまでよく目立つ。後は絨毯とか照明とか本当にその程度で──もしかしてこれから新しく迎えるメンバーの部屋とかそういう──
「えっ」
不意に扉を閉められた。
「マスター?」
途端に不安が募る。
「そっちから扉は開けられるか?」
不思議な質問である。ラディスは訝しげにしながらも問い掛けに従ってドアノブを捻ってみたが、これまた押しても引いてもびくともしない。
「あ、開かない……」
「そうか。なら成功だな」
えっ?
「ま、マスター?」
「待っていろ」
心なしか楽しげな声。
「他の奴を呼んできてやる」
えっ、……ええぇええええ……?
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