僕らは甘やかし隊!
そうして厚意に甘えるまま食事を終えた子ども達は大浴場に来ていた。まさか早々に甘やかす云々を投げ出してひとっ風呂浴びにきたのではない──リンクにお願いされてとある目的を達成するべく訪れていたのである。
「トゥーン!」
「ん?」
その目的というのが──
「わぶっ!」
お風呂掃除。
「やったなぁっ!」
こうなるのはまあ目に見えていたわけで。シャワーホースを片手に追いかけっこが始まってしまうのだからピチカは浴槽をスポンジで磨く手を止めて立ち上がり頬を膨らませる。
「遊ばないのっ!」
賑やかなことである──脱衣場にある洗濯機に籠の中の洗濯物を放り込みながらネスは思わず苦笑いを浮かべた。と、リュカが歩み寄ってきて、
「洗剤……どれくらい入れたらいいかな……?」
「こーいうのって"目安"だろ?」
その"目安"が分からないのである。
「適当だよ適当」
たまたまなのか、はたまた見張っておいてくれとでも言い付けられたのかマリオが口を挟むとその隣のルイージもうんうんと頷いた。
「柔軟剤と漂白剤の違いは分かるかい?」
「……ええっと」
分かるはずがない。
「自分たちでやりたい?」
ルイージの問いにリュカが頷くと。
「教えてあげるね」
程なくして大浴場の扉が開いたかと思うと案の定頭の先から爪先までびしょ濡れになったディディーとトゥーンが出てきた。気付いたマリオが歩み寄る。
「なぁにやってんだよ」
「だってさぁ」
「先に仕掛けたのそっちだろー」
と、不貞腐れた顔で文句を投げ合いながらタオルで拭われる始末。
「なんか……結局いつもどーりだね」
続けて出てきたピチカも被害を受けたのか少しだけ濡れてしまっていた。自らタオルを頭に被り水滴を拭いながら苦笑いを浮かべる。
「兄ちゃん……俺たちに出来そうな簡単なことしか頼まないもんな」
不服そうにトゥーンが呟く。
「だって結局僕たちの方が子どもだもん」
仕方ないよ、とピチカ。
「うーん」
今度は子ども組五人揃って唸った。
まあ確かにこのままお願いを聞いて叶えるだけでも彼らにとっては甘やかせてもらっている内に入るのだろう……でも、そうじゃなくてもっとこう、違うことをしてあげたいのだ。
「ほらよ」
と。マリオはタオルを被せたまま何の気なしにディディーとトゥーンの頭をぽんぽんと叩いて。
「後は自分で拭けるだろ」
二人は顔を見合わせる。
「ったく……ほんと、目が離せないっていうか」
閃く。
「──集合っ!」
かと思えば号令の後円陣を組んで作戦会議。
「な、なんだなんだ?」
「何か思いついたみたいだけど……」
マリオとルイージは肩を並べて疑問符。
「……どうよ?」
ディディーが作戦を告げれば。
「それなら僕たちにも出来る簡単なことだし」
「自分で自分にしてやれないことだよな!」
「でも……なんだかドキドキするね」
「こーいうのして許されるのが子どもじゃん?」
好評ともなれば決行する他ない。
「よーしっ!」
ディディーは拳を振り上げる。
「リビングに行くぞー!」
「おーっ!」