君は死ぬより惨い夢を見たことがあるか?



図書室。バトルルーム。

すれ違う仲間たち。

「……この傷」

ふと目に付いた壁の傷に触れながら呟くと。

「それを提案したのはドンキーの奴だ」

ユウは腕を組みながら答える。

「毎年同じ日に同じ場所に身長を記録して成長を実感するのが青春だとか何とか抜かして。悪ノリしたリンクがマスターソードを使ってそれを刻んでくれたが結局一週間と経たない内にマスターに見つかって文句を言われながら修繕されたな」

思わず、吹き出してしまった。

「そんなことがあったんだな」
「あれに一番腹を立てていたのは誰だと思う?」
「……うーん。リム?」
「正解だ」

その時の様子を実際目にしたわけでもないというのにやけに鮮明に脳裏に再生されて。

「そっか。……そっか」

次第に笑みを失せながら。

「……ユウ」

ゆっくりと手を離して伏し目がちに。

「行こうか」


エントランスホール。両開きの扉の前。

「フォックス」

今度そう呼んだのは傍らのユウだった。

「……うん」


視線を注がれている。

"また"引き留めようとしている。


「……ラディス」
 
 
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