君は死ぬより惨い夢を見たことがあるか?



薬にも食前と食後があることに気付いたのは食堂に辿り着いてからで。それでもよくある頭痛薬なんて大体が食後だろうと思い直しながら扉を開ければ味噌汁だの焼き魚だのといった如何にも朝食らしい食欲のそそる匂いが。……

「ユウ」

その人が声を掛けるよりも早く。

「どうしても。この席で食べるのか?」

ユウは目を細めて答えた。

「……ああ」


そう時間の経たない内にゼルダとヨッシーがそれぞれの朝食を運んできて。空腹は確かなのにそれでも自分は一向に手を付ける気になれなくて。

「あのさ」

影を落としながら。ぽつりと。

「見て回りたいところがあるんだ」

ユウは食事に手を付けていなかった。

「いいかな」

膝の上で両手の拳を緩く握りながら言う自分は。彼の目にはどう映っていたことだろう。

「……分かった」


どんな見え方であれ。

最後の景色でなければならない。


「ありがとう」

ぎこちなく笑って返す。

「助かるよ」
 
 
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