君は死ぬより惨い夢を見たことがあるか?
ピピピ。ピピピ。
無機質なアラーム音を響かせる目覚まし時計を乱暴に叩いて小さく呻く。うっすらと目を開いたけど何だか頭が重くて体が怠い。何となくでもそれが健康第一だった自分にしては珍しい体調不良だと察して深い溜め息混じりに仰向けになりながら頭の上に腕を乗せて天井を仰いだ。
今日の任務、……
「はよー」
覚束ない足取りで洗面所に赴いた先。出会したカービィが挨拶を。おはよう、と小さく言って片手を軽く挙げたけど何でだろうこのやり取りは以前にもしたことがあるような気がする。
「大丈夫?」
訝しげに覗き込む顔に見覚えがあった。
「薬は」
遮るように口を開いたが言葉が出てこない。
「……何?」
嫌な動悸がする。
「、いや」
不自然に口角を持ち上げて作り物の笑顔で取り繕おうとしながらその脇を抜けて鏡の前へ。蛇口を捻って出てきた水を手のひらで掬い己の顔面にお見舞いしてやったが、何故だかこの瞬間ぎくりとして恐る恐る顔を上げていく。
……俺は。
「フォックス?」
カービィがきょとんとして声を掛けた。
「マジで病人みたいな顔してるって」
「……ははは」
蛇口を捻って水を止める。
「薬は、ご飯を食べてからにするよ」