愛を込めて手作りを



「……ふ」

そんな具合に。

急に笑みを零すものだから。

「な、なんだ」
「だって兄さんさっきから落ち着かないし」
「当たり前だろう」

マスターはむすっとする。

「溶かしてから冷やして固めただけだぞ」
「あっやっぱりそれだけだったんだ」
「お前の口には合わないかもしれないがな」

突っぱねたつもりはないがそんな調子で返して顔を背けると程なくしてクレイジーは肩を叩いた。今度は何だと振り向けば唇を重ねられる。

「!、……ん」

口内に送り込まれる甘味。

「美味しい?」
「、……当たり前だ」
「僕もそう思う」

クレイジーは目を細めて微笑。

「溶かして冷やして固めただけとか言ったって僕の兄さんが作ったんだから僕が世界一好きな味に決まってるでしょ」


ああ。成る程。

そういうことだったのか。


「ちょっと予想外だったけど」

クレイジーは顔を離して座り直しながら。

「自信がないとそうなるんだなって」

口元に笑みを浮かべながら小首を傾げるのだから顔が熱くなるのを感じた。確かに思えば自分は相手にとっても自分にとっても最高と呼べる状態の代物しか創造してこなかったのでこういう馬鹿でも見様見真似で作れるものを手作りして渡すのは初めてだったかもしれない。

「そういうの僕だけにしといてね」
「愚問だな」
「約束のちゅーは?」
「……まったく」


甘く重ねて織り成される。


君だけに。

愛を込めて手作りを。



end.
 
 
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