愛を込めて手作りを
厭に緊張してしまう。
「……バレンタ」
「お返しっ!?」
そしてこの驚きの反応速度である。言い切るより早くクッションを胸に抱きながら急接近するクレイジーにマスターは若干身を引いて。
「あ、……ああ」
「そろそろかなぁとか思ってたんだよね!」
ぱっと離れたクレイジーはソファーに座り直すとクッションを抱きしめさながら乙女のように頬を擦り寄せながら。
「えへへへ。婚姻届とか?」
「んなわけがあるか」
「はいはい冗談だって」
クレイジーは顔を上げて足を前後に揺らす。
「ホワイトチョコレートのパフェとか?」
「いや」
「マシュマロって意味合い的にあんまり良くないらしいよ。ちゃんと調べた?」
「、それとなく」
期待と妄想が目に見えて膨らんでいく。
「やっぱり兄さんのことだからクーベルなんとかってチョコレート使ったりしてんだろ?」
「いや……」
「じゃあじゃあマカロンとか」
「、クレイジー」
耐え兼ねて差し出した。薄い桃色の包装紙に茶色のリボンを施された丸い箱にクレイジーは目をぱちくりとして。まあ確かにホワイトデーといえば青や白といったイメージだろうしハートじゃないのかというツッコミもあるだろうし。
「……これ?」
ぽつりと零してクレイジーは受け取ると。
「開けてもいい?」
「……ん」
公開処刑を受けているような気分だ。
此方の気などつゆ知らず弟は容赦なく箱を丸裸にして蓋を開く。どんな反応をするものかと分かりやすくちらちら窺っていれば創造神の兄にしてはとでも思ったのだろう小首を傾げてチョコレートを見つめた後箱の裏まで確認している。気持ちは分かるがあまりにもこそばゆい。
「手作り?」
「当たり前だろう」
「そうだよね」
くそ。やはりあの低脳どもに意見を頂戴しようだなどと血迷うべきではなかった。
……だってほら。
こんな反応。見たことがない上に耐えられない。
「食べていい?」
「……ああ」
やはり。
いつものように創造神らしくこの世に二つとない良いものを作ってやるべきだったか──