愛を込めて手作りを
何を藪から棒に。愛する弟が手掛けたものなら炭でも受け取ってきた前例があるというのに。
「そうですね」
ダークウルフは冷蔵庫の中にバットを入れながら節目がちに。
「重要なのは過程や工程ではありませんから」
優しく語りかけるように。
「どんなに手間暇かけて作っても高級な食材を使っても──はたまた有名な洋菓子店で長時間並んだ末に購入したのだとしても想い慕う人が作った料理には敵いません」
ダークウルフはそこまで言って冷蔵庫の扉をしっかり閉めてから振り返る。
「ね。……リーダー」
急に話を振られたからなのか思い当たる節があるからなのか。スピカは小さく肩を跳ねるとばつが悪そうに顔を背けた。彼らしい振る舞いにダークウルフは柔らかな笑みをこぼすと。
「簡単すぎて驚かせてしまいましたね」
マスターに向き直る。
「大丈夫。自信を持ってください」
後は冷えて固まるのを待つだけ。
「包装紙とかリボンも買ってきたんスよ」
「花柄じゃねーか」
調理の材料以外にも買い込んでいると思えば。同じビニール袋の中から次々と取り出されるダークフォックスのセンスにより購入されたホワイトデーのイメージに沿わないラインナップにスピカがすかさずツッコミ。
「これとこれの組み合わせとか」
「要らない」
「マスター様めっちゃ嫌そうでウケる」
その夜。
「クレイジー」
夕食を終えて食器を片付けた頃。ダイニングキッチンから出てきたマスターはリビングのソファーで寛いでいたクレイジーの隣に腰を下ろす。
「なぁに?」