愛を込めて手作りを
チョコレートを使った菓子といえば色々ある。
ガトーショコラやトリュフにブラウニー。作るには少々骨が折れるところもあるだろうが創造神の手に掛かれば一瞬で作り出せる。順序よく手作りするにしたって自負するレベルには天才である自分が躓くはずも。寧ろ更にアレンジを加えてこの世に二つとない最高の出来のものを生み出して店でも開いてやろうじゃないか。
なんて。
思っていたのだが。
「後は冷やすだけですね」
ダークウルフはにっこりと笑顔。
「これだけか?」
「? はい」
「馬鹿にしているのか?」
思っていた以上の低難易度に呆れた。
「ただの生チョコじゃないか」
原点にして頂点とでも言いたいのだろうか。
「いいじゃないっスか。生チョコ」
「溶かして固めるだけだろう」
「……確かに」
スピカは庇い切れずに納得。
「実は不思議なことにその溶かして固めるだけの簡単な作業が出来なかった人がいるんですよ」
「教え方が悪かったんだろうな」
「釣れませんねえ」
センサーが有能すぎる。
「その辺の子供にだって作れるじゃないか」
出るわ出るわ不平や不満。
「そうですね」
ダークウルフはチョコレートを流し込んだ様々な型を丁寧にバットの上に並べながら。
「マスター様。もしもクレイジー様が同じようにただ溶かして固めただけのチョコレートを持ってきたらどう思いますか?」
突然の質問にマスターは少し目を丸くする。
「受け取るに決まっているだろう」