愛を込めて手作りを
ったく。どうしてうちの連中は進んで厄介ごとに首を突っ込むのが好きなんだか。
「材料買ってきたぜぇ」
例の基地の中にあるダイニングキッチンに移動したスピカは何故かエプロンを付けていた。彼だけではなく最初に言い出したダークウルフはもちろん、マスターにダークファルコまで。ただ一人ダークフォックスだけは買い出しを言い渡されて今しがた戻ってきたところ。
「わざわざ買う必要あったか?」
「何でもかんでも力に頼るんじゃねえよ」
「リーダーの言う通りです」
ダークウルフはダークフォックスからビニール袋を受け取ると中から材料を取り出す。
「……おい」
「いやだってシンプルにチョコレートつったって色々あるしどれとは言ってなかったじゃん」
物の見事に種類がバラバラである。
「何を作るんだ?」
マスターが訊ねる。
「はい。まずはチョコレートを──」
「俺までエプロン付ける必要あったかよ」
「キッチンに立つ者の嗜みというものですよ」
そういうもんなのかとスピカは渋々納得したが単に彼らが見たかっただけの話である。
「やり方は分かりますか?」
「誰だと思っている」
「弟様は理解してくださらなかったので」
「説明が下手なんだろう」
ブラコン基マスターは鍋に水を入れてコンロの火にかけるとその間に用意したまな板の上にチョコレートを置いた。次いで包丁をシンクの下から取り出して刃を添えれば怪我をしやしないか目を見張ってしまうも当人は慣れた様子で細かく刻んでいく。片手だけでは難しいだろうに手こずる様子なく淡々とこなす辺り伊達にその姿で十数年過ごしたわけではないようだ。
「こんなものだろう」
そうして数分としない内に数種類のチョコレートが細かく刻まれてボウルの中。
「次は生クリームを加えながら溶かしましょう」