愛を込めて手作りを
扉の閉まる音。足音が遠ざかる。……
「……何したんだよ」
「知りませんよ」
「静かにしろ」
ひそひそと言葉を投げかけ合う三人を尻目に見てスピカは玉座に鎮座する主君をそろりと見上げる。そのひとは脚を組み直して肘掛けに右肘を掛けて頬杖を付きながら小さく溜め息。何か気に障ったと見て取れる仕草に嫌な予感というものが背中を這い上がってくる。……何を考えている?
「お前たち」
静かに呼ばれて誰もが即座に頭を垂れた。
「はい」
「あれは用意したのか」
「と申されますと」
ダークファルコが訝しげに口を挟む。
「忘れたのか」
マスターは変わらず落ち着いた口調で。
「バレンタインデーの返礼品だ」
返礼品。三の月。
このタイミングでそれを聞くと言うことは。
「ホワイトデーのことっスか?」
ダークフォックスが訊くとマスターは溜め息。
「そういうことだ」
「えーもしかして何かくれるんスか?」
沈黙と冷たい視線が刺さる。
「ですよねぇ」
「そもそもお前が何か貢ぎ物を寄越したか?」
「プレゼントしたじゃないっスか」
「覚えがないな」
ダークファルコがぼやく。
「クレイジー様ですね」
全て回収された後に破壊処理でもされたか。
「それで」
スピカが本題に触れる。
「俺たちにそんなこと聞いてどうするんだよ」