なんてったってシスター!
時刻は午前零時を過ぎた頃。
「……そんなことがあったのか」
報告をしないはずもない。ダークウルフはひと段落ついたところで部屋の外に出てとある人物と通話をしていた。伏せるまでもないのだが。
「怪我はさせてねーだろうな」
「はい。マスター様が止めたので」
電話の向こう側でスピカは胸を撫で下ろす。
「本当に驚きました」
ダークウルフは目を細める。
「もっとか弱い方だと思っていたので」
「……お前なぁ」
スピカは小さく息を吐き出す。
「ただの贔屓で送り出してねえよ」
本当に。
あの時の彼女は。──目で追えなかった。
「流石ですね」
「誰の妹だと思ってんだ」
ダークウルフは笑みをこぼす。
「……ピチカは?」
そんな疑問にダークウルフは気付いたようにそっと自室の扉を開いた。普段自分が眠っているカプセルの中に小さな影が二つ。
「眠っていますよ。……姉妹のように」
まだ小さな手を重ねて握り合って。
安らかな寝息を立てながら。
「写真、送りましょうか」
「そいつ男だろ」
あっ。
「す、すみません、リーダー」
「今日だけだからな」
スピカは電話の向こう側で微笑する。
「写真は送れ」
「いるんですね」
「切り取るからな」
「!?」
「冗談だよ」
あの人が自慢であるように。
俺たちにとっても。
あなたは。何よりも大切な。……
end.
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