なんてったってシスター!
舌打ち。靴音。ピチカは脱力する。
「怪我は?」
「するわけないだろ。……噛まれただけ」
クレイジーは大人しく玉座に座るマスターの側に移動するとピチカをひと睨み。
「何。何でここにコイツがいんの」
「申し訳ありません」
音も立てずに入ってきたダークウルフが真っ先に跪いて頭を垂れた。その斜め後ろにはそれぞれダークフォックスとダークファルコも。咳込む声や体を引きずるような音が──事情を説明する声が遠退く。まるでこの世界に一人置いてけぼりになったような感覚にピチカは茫然自失として。
「……成る程」
マスターは短く息を吐いた。
「代役を立てるのは正しい判断だろうが相手は敵対部隊だという点を考慮しなさすぎだ」
「……申し訳ありません」
冷たく視線を当てられてピチカは肩を跳ねる。
「お前も。よく似ているな」
「……ふぇ」
「兄の方じゃない」
マスターは立ち上がる。
「行くぞ。クレイジー」
「いいのかよ」
クレイジーは不服そうである。
「兄との時間より優先するべき事項か?」
「、……分かったよ」
そう言われてしまえば返す言葉も。マスターとクレイジーはダークシャドウの面々が頭を垂れる中ゆっくりと。靴音を響かせながら着実に。
「おい」
横切る寸前。クレイジーは睨み付けて。
「……次はないからな」