なんてったってシスター!
亜空間──研究施設を模した黒塗りの基地。
この場所には亜空軍の主将たるマスターとクレイジーがいる。本来なら敵対している相手だが今回ばかりは代役を務めているので。まあ今すぐ倒せと言われても敵う相手ではないわけだが。
「あー」
ダークフォックスが足を止めた。
「、どーしたの?」
「その先の扉なんスけどね」
「……ああ」
ダークウルフも察した様子。
「始まってますね」
「なになに?」
「そこの扉が半開きの時は」
ピチカはゆっくりと目を向ける。
「お仕置きを受けている時なんです」
……おしおき?
「何も聞こえないけど……」
通路の先。見るからに重そうな他と異なる扉。それが醸し出す空気は確かに目で見るだけでも重く近付くことさえ憚られるようだが──お仕置きと話す割には物音一つしない。ピチカは怪訝そうに目を凝らしながらその距離を詰めた。
ゆっくりと。
足音を立てないように。……覗き込む。
「……!」
きりきりと締め上げられる。
「ご、……め……なさ、……すた、様……っ」
搾り出した声は弱々しく。
「くれい、じ、様……っ」
「……なぁに」
主君は冷たく紅の目を擡げる。
「聞こえないなぁ……?」