バウンサー
不穏な悲鳴が会場の何処かで。
「うわああっ!」
次々と。
「なんだなんだ!」
「きゃああ!」
会場は混乱に包まれる。
「見張りの連中はどうした!」
……同じ。
「お前の仕業か!?」
傍らの男がユウの胸ぐらを掴んだ。予め抵抗が出来ないように両腕を後ろに回した上で手錠を掛けられていたユウは当然のことただ見つめるだけの形となる。その様がどう映ったのか男はぎりっと奥歯を噛み締めると拳を振り上げた。
「よし」
ようやく開かれた口から発せられた言葉に男が一瞬気を取られたが刹那。
「え」
腕は掴まれて。
「うぎゃああぁあッ!」
ばきばきと骨の折れる音砕ける音。声を上げて膝から崩れ落ちる男の背後に緋色の眸。
「な……なっ……」
司会の男は顔を引き攣らせながら後ずさる。
「災いの目を侮ってくれるなよ」
鍵が外れて手錠の落ちる音。
「元より素人に扱える代物じゃない」
司会の男は焦りに息を乱しながら辺りをきょろきょろと見回したが黒服の男たちが残らず倒れ伏しているのを確認すると懐から折り畳み式のナイフを取り出した。
それを構えて。駆け出して。
「リオン」
ユウは小さく息を吐いて瞼を閉じる。
「わん」