バウンサー
……始まったか。
司会の男は響めきを物ともせず身振り手振りは大袈裟にそして声高らかに如何に商品価値があるものか語り始める。南京錠の外れる音が聞こえてユウは足を踏み入れた男に顔を向けたが。
ぐいと前髪を引かれて頭を持ち上げられる。そうして男は雑に扱いながら目隠しを取り払うと澄んだ紫色の瞳が姿を現した。
「さあ、とくとご覧あれ──これこそが未来を視る厄災の目!」
おおっと歓声が上がれば紳士淑女が口々に容赦なく価格を前代未聞の額まで導いた。未来を見通すその目を自分のものだけに出来たならその程度の額幾らでも取り返すことができると見込んでの入札だろう。司会の男がドミノマスクの下でその目を三日月に歪めるのが見えた。
「他にお声は御座いませんか!」
声が次第に静まってくる。
二十時。
「時間だな」
ユウは呟いた。
「あぁ?」
傍らの男が睨みを利かせたのも束の間。場内の電気がふっと消えた。まさかこれが節約であるはずも演出であるはずもなくかといって上階のショッピングモールが閉店した影響であるはずもない。響めく場内に不安が渦巻いていき──
その期待に応えるように。
「ぎゃあっ!」