バウンサー
犬、と聞けば何を思い浮かべるだろうか。
純粋にペット? はたまた警察犬や盲導犬? 共に社会の為に働きかける立場でも純粋無垢に愛想を振り撒くだけでも犬という存在はいつ如何なる時も主人に忠実で従順で健気で愛おしい──そんな存在であることに違いないだろう。
「ユウ!」
その点で言えばこいつも同じ。
「待て」
食事を終えて食堂を後にしたユウは背中を見つけて駆け寄ってきたその彼を振り返らないままぴしゃりと命令を下した。
「三日後の二十時」
その彼──基パートナーのリオンはふさふさの尻尾を振りながら次の言葉を待つ。
「いいな」
必要最低限。けれどそれで伝わったのかそれとも彼自身の心の声を読み取る能力で意図を汲み取ったのかリオンは口元に笑みを浮かべると。
「わん」
──それがちょうど"三日前"の出来事。
「見つかりませんね」
リンクは小さく息を吐き出す。
夕飯時を終えた食堂には人が集まっている割に暗い空気が充満していた。そこには何故かスピカを筆頭にダークシャドウのメンバーが何人か居合わせている。スピカは集めた資料をテーブルに広げて顰めっ面で見つめていたが不安げに覗き込んだピチカが視界に入るとその頭の上にぽんと優しく手を乗せて。
「……大丈夫だからな」