誰でもいいとは言ってない!
ぜぇ、はぁ──肩を上下させて荒く呼吸を繰り返す最中それでも整わない内に手を伸ばそうとするものだから「わあっ!」と威嚇。これには流石のラディスも手を引っ込めながら仰け反って。
「わ、分かったよ──」
その直後の事である。どたどたと騒がしい足音が聞こえたかと思えば扉が開け放たれて、
「どうしたッ!」
わぁ。デジャヴ。
そこには今朝と同じく英雄王の姿が──
「……ラディス」
怒号が飛び交うかと思いきや。
「君もかい」
……へ?
「ロイから話は聞いたよ」
扉を後ろ手で閉めながら進み出て腕を組む。そうともなればラディスもいい加減カービィの上から退いてベッドの縁に腰を下ろした。
「本当。見境なしかと思ったんだけどね」
そんなに言うならあんたが僕の相手してみせてよ。
「誰でもいいわけじゃないわけだ」
「違っ」
カービィの不貞に釘を刺そうとしたロイもまた同じように話を持ちかけられていたのである。運悪くその場では弁解の余地もなくマルスから制裁を下されてしまった訳だが──兎角思わぬ口を挟まれたことで慌てて体を起こしたカービィはマルスに歩み寄ろうとする。けれどラディスはすかさずその腕を掴んで進行を阻止。
「カービィ」
むっとして振り返れば真剣な面持ちで。
「どうだった?」