演劇上等!~桃太郎編~



スタンドマイクの前に立った女子副部長は舞台より少し離れた位置から、ライトアップされて脚本を手に、語り出す。

『昔々、とある山奥に心優しいお爺さんとお婆さんが仲良く暮らしていました』

舞台に現れたのは、お爺さん役のマリオとお婆さん役のルイージ。この時点で講堂内ではくすくすと笑う声が聞こえて。

「何で僕がお婆さん役なの……」

ネガティブモードに入ってしまった今のルイージに何を言っても無駄なので、マリオは目を逸らし、苦笑で済ませて。

『ある日、お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きました』

「稼げんのかこれ……」
「きっと年金で暮らしてるんだよ兄さん」
「芝刈りの必要性」

ぶつぶつと呟きながらも、マリオは山があるとされる方面へ歩いていき、一旦舞台を下りて。ルイージは川に見立てた、細長く横に流れるブルーシートの前へ。
 
 
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