「お願いします！」

演劇部の部長である男子生徒と、副部長である女子生徒は揃って頭を下げた。

「だから」

ピーチは溜め息混じりに振り返ると。

「どうして私なのよ」


――演劇部は来週、“桃太郎”を題材にした演劇を全校生徒に披露する予定だった。

しかし、大切な部員が何故か事故に遭ったり、病気をしたりと不幸が続き、舞台装置や脚本、音楽、照明などで手一杯に。

演技する者がいなくては始まるものも始まらない……とにかく掻き集めてみたはいいが、肝心の主人公が決まらずに。


「それは……」

顔を見合わせる男子部長と女子副部長。

――名前が桃繋がりだから、なんて単純な理由。言ったら怒られるに決まっている。

「っお願いします！　俺達に出来ることなら、何だってしますから！」
「ちょっと」

ピーチはふっと笑みを溢して。

「それを先に言いなさいよ」