紙一重の温情
つまらない──率直にそう思った。
いつの間にか自室に帰り着いていたタブーは腕の中の仔猫が不思議そうに見上げるのを視線も寄越さずに解放する。優しく床に下ろすのではない。ぱっと腕を広げて落とすように。それでも仔猫は優れた平衡感覚で難なく着地をしたがあれだけ可愛がってくれていたのにどうしたのだとばかりに歩き出すタブーを追いかけて。
「なに」
足下に纏わり付く仔猫を冷たく見つめる。
「じゃま」
飽き性。
誰もが指摘したタブーの欠点は早くもその身を露にし始めていた。まさか蹴り上げるまではしないが擦り寄る仔猫を避けるようにタブーはベッドの上へ。それでも仔猫が追ってベッドによじ登れば不機嫌そうな表情になって、
「しつこい」
首根っこを掴んで吊るしながら睨めども。仔猫は遊びと勘違いをして。
にゃあ、と。
「ゼロにしてもいいんだよ」
通じるはずのない脅し文句にも。
変わらず仔猫は愛らしく。
「ゼロにしたら」
なにもかもわすれて──
「、……かぞく」
ぽつりと小さく呟いて。
タブーは仔猫をじっと見つめる。
「たいせつ……」