紙一重の温情
スピカは一瞬だけ目を丸くして、
「……拾ったのか?」
「うん」
「マスターとクレイジーは?」
「かってもいいよって」
聞くや否や溜め息。
「……何考えてんだか」
良くも悪くも飽き性だというのに。明日にでもいらないとか言い出しそうなものを二つ返事で受け入れるなんてどうせ先を見越した上で飼育放棄の経緯を楽しみに待っているんだろうな。あいつらときたら相変わらず性格のよろしいことで。
「最後まで飼えるのかよ」
スピカは刺々しく言い放つ。
「飼うってのは簡単な事じゃねえぞ」
タブーはじいっと見つめていたが腕の中の仔猫が無垢な声で可愛らしく鳴くのを聞くと。
不意と顔を背けて。
「うるさい」
仔猫を腕に抱いたまま。……ぱたぱたと。
「あーあー」
静かに閉まる食堂の扉を目にダークフォックスは足をぶらぶらとさせながらわざとらしく。
「いけねえんだぁリーダー」
「リーダーは正しいことを言った」
ダークウルフは腕を組んで深く頷き肯定。
「別にタブー様があの害獣をどーこーしようと俺たちどーでもよくねぇ?」
「そ、……そう……でしょう、か」
ダークロイはダークピットの後ろでぼそぼそと。
「い……命を粗末に扱うのは……あまり……」
「いやそれをお前が言うのかよぉ」
直近で受けていた任務の内容を知っていたダークフォックスが痛い所を突けばダークロイは案の定狼狽えて肩を竦めて縮こまった。
「どぉだろうねえ」
ダークピットは食堂の扉を目に口元に笑み。
「……殺しちゃうのかなぁ」