紙一重の温情
──食堂。
「知ってたわぁ……」
床に差し出された小皿の上。仔猫用に用意されたであろう柔らかくほぐした焼き魚をはぐはぐと食らう仔猫を目にダークフォックスは近くの椅子に座りながら頬杖を付いて溜め息。
「羨ましいのなら一緒に食べられてみては?」
「犬じゃないんスけどぉ」
煽るダークファルコにひと睨み。
「おいしい?」
タブーは屈みながら仔猫に訊ねる。
「本当に……飼うんですか……?」
ダークロイが何気なく疑問を口にするとタブーはきょとんとして顔を上げた。視線を受ければ即座にダークロイは「すみませんっ」と慌ててダークピットの後ろに避難し縮こまる。
「どうして?」
「本当に一匹だけだったんですかぁ?」
ダークピットは首を傾ける。
「ねこだけだった」
そうは言ってもたまたま親猫が離れている時に拾ってきた可能性はある。そうでなければこれだけ小さな生き物が人通りもそれなりに多いであろう公園に姿を現すはずもないのだから。
「いいじゃないですか」
ダークファルコが口を挟む。
「野生でいるより飼育下に置いた方が悪い病気に罹りにくくなるというリスク回避にも繋がりますから単純に寿命が伸びますよ」
最もらしい意見である。
「何やってるんだお前ら」
と。現れたのはダークウルフとその後ろには。
「おや。大きな猫が来ましたね」
「……は?」
スピカは眉を寄せる。
「リーダー見てくださいよぉ」
「何を」
聞かれるより早くタブーは仔猫を抱き上げて。
「ぼくのねこ」