紙一重の温情
案の定、弾かれたようにクレイジーはマスターを見た。
「許可しよう」
「ちょ……本気かよ!」
「仕方ないだろう」
マスターは息をつく。
「言い出したら聞かないからな」
それでも尚クレイジーは納得がいかない様子でタブーの腕に抱かれた毛むくじゃら、基仔猫を鋭く睨み付けていたが。
「クレイジー」
諦めろとばかりにひと声呼ばれてしまえば。
「……おい」
クレイジーは一連のやり取りをこれまでぽかんと見守るばかりだったダークロイとダークピットに不服そうな声音で投げかける。
「あの汚いの洗ってやって」
「……えっと」
「お前らの基地の方で、だからな」
何だかよく分からないがお仕置きを回避することに成功してしまったらしい。無論こんな機会は後にも先にもあるはずがないのでそれぞれは即座に立ち上がると「タブー様」「、行きましょう」と声を掛けて足早に扉の方へ。
「……確かに……汚れていますね……」
「きれいになる?」
「タブー様のお召し物くらいにはなるかもぉ」
そんなやり取りを交わしながら。
扉が閉まれば。
「……いいのかよ兄さん」
クレイジーはようやく玉座の後ろから出てくるとふわふわと浮遊しながらマスターの傍らへ。
「問題ない」
小さく溜め息。
「あれは飽き性だからな」