紙一重の温情
まるで毛玉のようなふっくらとした体毛に、埋もれた瞳は愛らしくまん丸と。体毛のお陰で大きく見えるがその顔立ちからまだ子どもであろうことが窺える。元々は真っ白だったのだろうが一体何処で見つけてきたのやら薄汚れていて泥のような砂のような匂いが仄かに鼻につく。
「おちてたからひろった」
「汚いだろ」
「うん」
クレイジーはあからさまに嫌そうな顔である。
「だからあらうの」
「洗ってどうするんだよ」
タブーはそろそろと顔を上げる。
「ぼくのものにする」
純真無垢の真っ直ぐ曇らない眼差しで。
「かっていい?」
これは。
「駄目に決まってんだろ!」
すかさずクレイジーが声を上げた。
「そうだぞ。タブー」
マスターも呆れたように息を吐いて足を組む。
「第一外から持ってきたものだろう。どんな菌を持っているかも分からないのに飼育など」
「これがいい」
「同じものを創ってやるからそれは元の場所に」
「これがいい」
頑なに譲らないタブーに。
「、……分かった」