紙一重の温情
その時だった。
「わ、」
開いた扉の隙間から何か白い塊のようなものが飛び込んできたかと思うとダークロイのすぐ脇を潜り抜けて玉座に鎮座する創造神の元へ。無論外野の侵入に気付かないはずもなく右目が青く瞬けば即座に展開した薄青色の防壁が塊を弾いた。その隙弟が紅く燃ゆる目で視界に捉えたが力を発動するよりも早く硝子のひび割れるような音が鳴ってみるみる内に力は縮小──零に。
「だめ」
禁忌の力を使って破壊神の力を抑え込む。
そんな芸当が出来るのは。
「いじめないで」
新世界創造計画用人型禁忌兵器──タブー。
「……お前」
そんな彼が胸に抱き上げたのは。
「それ何?」
眉を寄せて問えば。
「ねこ」
猫。……猫!?
「おっお前なに拾ってきてんだよ!?」
クレイジーは飛び上がり玉座の後ろに隠れた。
「……お前。猫なんか苦手だったのか?」
「苦手じゃないけど」
兄のマスターに訊ねられれば。
「ただの気まぐれで爪立てるじゃん……見た目はいーけど我が儘だし。お高くとまってて──」
視線が刺さる。
「何?」
「……いや」
マスターはふっと逸らしてタブーに視線を戻す。
「その猫。どうしたんだ」