紙一重の温情
晴天。こんな天気のよい日はお出かけに限る。
だって視界が開けていて。
いいことがあるって予感がする。
「けだま」
そんな矢先に屈み込んで拾い上げたのは。
「……きたない」
しろくてふわふわ。
──亜空間。
「それで獲物を取り逃がしたって?」
周知の悪辣な神々が拠点とする研究施設を模した黒塗りの基地の中にある例の場所。
「……はい」
王の間なんて大袈裟に称されるそこの温度が格段に冷えつつあるのは無論双神の部下たるダークシャドウの失敗が原因である。頭を垂れて跪いた姿勢で任務の報告に訪れていたダークピットとダークロイは文字通り死を覚悟していた。痛い苦しいだけの話で済めば安いものだが良くも悪くも子どもの考えることは凡そ検討もつかない。故に口を閉ざす他ないわけで。
「そう」
冷たく視線が刺さるのを感じる。
「どうしようか。兄さん」
「そうだな」
肩を寄せ合って話す双子の顔色も窺えない。
「……ご、……めんな、さい」
ダークロイがぽつりと口を開いた。
「なぁに」
「、……ぼく……が、……僕のせいで……」
ああもう黙っていればいいものを。
ダークピットは赦しを諦めた。
「ふふ。聞こえないなぁ」
破壊神は嗤う。燭台の火が掻き消える。
薄暗い中で怪しく浮かぶ紅。
何かのひび割れる音。
「…‥もっとはっきり言ってごらん!」
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