病めど病まれど



その瞬間。──ばちんと何かが弾けた。

「殺しませんッ!」

途端に両膝を付いて縋り付くようにスピカの服を掴みながらダークウルフは。

「貴方が! 泣いて喚いても叫んでも!」

叫ぶ。


「俺"たち"はッッ!」


スピカは目を細めた。

「……だから怖くねえんだよ」

ゆっくりと片膝を付いて抱き締める。

「俺だって。お前らを人間にした責任がある」

優しく頭を撫でながら。

「一緒に生きよう。……な?」


響く。


「リーダー、」
「ゆっくり息を吸え。……そうだ」

指示に従えば呼吸は整っていくのに。

「……いい子」


あなたの顔が見れなくて。


「落ち着いたか?」
「……はい」
「じゃあもう大丈夫だな」

やがて、ゆっくりと解放される。

ようやく窺えたその顔に心臓がぎくりと跳ねる。

「リーダー」


嗚呼。


「……ん?」


愛する貴方に。

そんな目をさせてしまったのは。



end.
 
 
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