病めど病まれど
振り翳される。影が差す。
「ウルフ」
一言。──それだけだった。
次の瞬間スピカの影がぐにゃりと歪み盛り上がると人の形を成してスピカの前へ飛び出した。影を千切り振り下ろされた剣を展開した赤の反射板で防いで。ぐるぐると威嚇に喉を鳴らす中、やがて黒は弾けて本来の姿を表す。
「よォ?──忠犬サマ」
ダークアイクが口角を吊り上げて語りかけるその相手はダークウルフだった。ダークウルフは反射板を消失させるとダークアイクの剣を持つ手を手の甲で下から上へと打ち上げ、更に回し蹴りを繰り出すことで剣を手放させる事に成功する。舌を打ったダークアイクが後退しようとしたその隙を見逃さずスピカは素早く進み出ると。
「だぁッづ!?」
向こう脛を蹴り上げた。……痛い。
「食堂!」
何を言われるよりも早くピシャリと。
「ったく、こんなに散らかして」
「……オレ様が?」
もう忘れている。
「つべこべ言わずにさっさと片付けろ!」
「おーおー」
スピカが怒鳴り付けるとダークアイクは頭の後ろをがしがしと掻きながら気怠そうに。
「お前らも。連帯責任だからな」
「リーダーは相変わらずだねぇ……?」
ダークマルスはスピカの後ろに回り首に腕を緩く絡ませながら抱き付く。
「次は……本当に殺されちゃうかもよ……?」
「リーダーから離れろ」
ダークウルフが銃口を向ければ。
「……はぁい」